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日外会誌. 106(10): 659-662, 2005


外科学会会員のための企画

生体臓器移植の現況と将来

血液型不適合・夫婦間生体腎移植の現況と将来

東京女子医科大学 泌尿器科大学院研究科

田邉 一成

I.内容要旨
腎移植は慢性腎不全の根治治療として最も優れた治療法であるが,ドナー不足は深刻であり,腎移植までの待機期間も長期化するばかりである.このような深刻な臓器不足を補うためドナー適応拡大が試みられており,血液型不適合腎移植や夫婦間生体腎移植が行われている.血液型不適合腎移植は,タクロリムス,ミコフェノール酸モフェチルなどの強力な免疫抑制剤によりその成績は飛躍的に改善し,短期生着率はほぼ95%に達している.さらに従来行われていた脾臓摘出もリツキシマブの投与により行われなくなりつつあり,血液型適合症例とほぼ同じ条件での移植が可能となりつつある.また,夫婦間の生体腎移植も適合性が悪いにもかかわらず,前述の強力な免疫抑制剤によりその成績は非常に良好である.ただし,夫婦間生体腎移植で注意すべき点として,夫から妻への腎移植の場合,妊娠による前感作抗体が存在すると非常に強い拒絶反応を起こすことが知られており術前の十分な検査,処置が必要となる.婦間腎移植では,術前の精神科医によるインタビューなどにより夫婦間に問題がないか確認しておく必要があり,問題症例の把握など適応の決定には十分な配慮が必要である.

キーワード
血液型不適合腎移植, 夫婦間生体腎移植, リツキシマブ

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