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日外会誌. 106(1): 23-30, 2005


特集

外科領域における輸血と血液製剤の現状と展望

6.貯血式自己血輸血

帝京大学 整形外科

脇本 信博

I.内容要旨
貯血式自己血輸血(PABD)は同種血輸血(ABT)後の感染症がない,もっとも良質な輸血療法である.術後の血栓症減少効果があり,患者が医療へ参加することによりえられる精神的効果も大きい.
ところが,近年,米国から1)核酸増幅検査(NAT)導入以後,輸血感染症が激減しているためPABDの必要性がない,2)PABDにエリスロポエチン(rEPO)が認可されていないため貯血後の貧血に起因する合併症が多い,などのPABDの問題点が提起されている.
一方,わが国でもABT後の感染症の発症率は減少している.ところが,わが国のABTには1)献血者のHIV抗体検査陽性者数が増加している,2)献血血液に対する需要がoutpacingすると予想されている,などの固有の問題点がある.また,PABDには1)rEPOが認可されているために貧血患者にも実施できる,2)適正輸血に向けて臨床医師に対する教育効果がある,などのメリットがある.
したがって,わが国ではPABDの必要性が高い.しかし,臨床医師がPABDを実施することが多いために,1)採血時の血液の細菌汚染,2)輸血時の血液の取り違え事故,などの問題点がある.また,消化器外科領域の実施が遅れている問題もある.今後は,「PABDは安全である」という錯覚を捨てるとともに,消化器外科での普及を促進する方法を確立する必要がある.

キーワード
貯血式自己血輸血, エリスロポエチン, 自己血採血時の汚染, 自己血返血時の取り違え事故, 保存前白血球除去

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