[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (42KB) [会員限定]

日外会誌. 106(1): 3-6, 2005


特集

外科領域における輸血と血液製剤の現状と展望

2.血液新法と新しい輸血のあり方

東京大学医学部附属病院 輸血部

高橋 孝喜

I.内容要旨
2003年7月に「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(いわゆる血液新法)」が施行された.同法の目的は,輸血療法の安全性の向上とともにアルブミン製剤などの血漿分画製剤を含む「血液の完全国内自給」の実現であり,医療関係者の責務として「安全かつ適正な輸血」の実践を求めている.
一定量以上の出血を伴う手術時などに輸血療法は重要であり,必要最小限の血液成分を補充する成分輸血が一般的になりつつある.しかし,わが国全体で見ると諸外国に比べ血漿成分が極めて多用されており,血漿分画製剤を含む「血液の完全国内自給」の達成にはなおほど遠い現況である.さらには,少子高齢化の進行に伴い,輸血用血液に限っても相対的な供給不足に陥ることも危惧されている.「血液の適正使用」が社会的要請であることを医療関係者は再認識すべきである.そして,輸血用血液の安全性向上は著しいものがあるが,輸血医療全体の安全性についてはなお多くの課題が残されている.例えば,輸血実施直前の確認照合ミスなどによるABO型不適合輸血(型違え輸血)も完全には解決していない.
血液新法では,法律名の通りの「血液製剤の安全性向上」,「安定供給の確保」に加えて,医療関係者に「安全で適正な輸血療法の実践」が要請されている.具体的には,「血液製剤の使用指針」および「輸血療法の実施に関する指針」,日本輸血学会の「輸血実施手順書」に則った適切な輸血医療を推進する必要がある.

キーワード
血液新法, 血液の国内自給, 血液製剤の使用指針, 輸血療法の実施に関する指針, 医療関係者の責務


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。