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日外会誌. 105(4): 266-270, 2004


特集

Oncogenic emergencyとその対応

2.甲状腺

日本医科大学大学院医学研究科 機能制御再生外科学 (第2外科・内分泌外科)

清水 一雄

I.内容要旨
甲状腺疾患で緊急的対応の対象となる病態は,甲状腺腫瘍,特に悪性腫瘍による気管への圧迫,浸潤から生じる気道の狭小化,狭窄,閉塞で,対応はその結果おこる急性呼吸不全に対するものが中心となる.その他,周囲血管への浸潤による出血も緊急的対応が必要である.対象疾患となる悪性腫瘍は甲状腺未分化癌,低分化型乳頭癌,甲状腺原発悪性リンパ腫であろう.未分化癌は,きわめて急速な浸潤性発育のため,早期に気管狭窄や肺転移による呼吸不全を来たす.本疾患の大半は分化型乳頭癌からの未分化転化によるものであり,長期間の甲状腺結節が急速に増大傾向を示したら本症を疑う.低分化型乳頭癌は,術後,比較的早期に局所再発を繰り返しつつ,周囲組織へ浸潤していく.初回手術での根治的治療が必要だがこの時点での分化型乳頭癌との鑑別は困難である.いずれも呼吸不全に対する救命的処置が主体で根治的治療は望めないことが多い.気管切開,気管内挿管はすでに不可能なことが多く,進行状況を確実に把握し早期にステント挿入などのQOLを主体とした対処が必要となる.悪性リンパ腫は,殆どの症例で橋本病が基礎疾患として存在している.橋本病の経過中に,急速な結節性腫大を来たしたら本疾患を疑う.未分化癌ほど浸潤傾向および急速発育は顕著でない.組織診断を確実に行った上で化学療法,放射線療法が効果的である.

キーワード
甲状腺癌, 気道狭窄, 救急処置, ステント

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