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日外会誌. 104(10): 701-706, 2003
特集
原発巣からみた転移性肝癌に対する治療方針
3.転移性肝癌に対する治療戦略
I.内容要旨25年間に125例の結腸・直腸癌の肝転移に対して167回の肝切除術を行った.初回肝切除の方針は肝表面にあるものには部分切除術,比較的大きなグリソン鞘に浸潤が疑われる例には葉切除以上の拡大切除を行った.初回肝切除術での術死は2例(1.5%)であった.初回肝切除後,再肝切除後の1-生率,3-生率,5-生率はそれぞれ90%,58%,51%および88%,60%,42%であった.再肝切除が可能であった例は有意に予後が延長された.予後を規定する有意な因子は肝内転移の分布,転移個数,転移巣の最大径,および肝外転移の有無であった.肝転移個数が4個以上の例は3個以内の例に比べ,術後肝内再発率が有意に高率であった.再肝切除後の予後は初回肝切除後の無再発期間が6カ月以内と7カ月以上の間で有意差が見られた.肝門部リンパ節転移例に対して,初回肝切除後8カ月以上の無再発期間が経過した例ではリンパ節郭清を伴う肝切除後5年生存が5例中4例に得られた.現在,われわれは再肝切除および術前の肝動注化学療法を施行しているが,これまでの治療成績をさらに向上させつつある.肝動注化学療法は術前3~6カ月間行い,癌の化学療法に対する反応性,初回の画像診断で診断されなかった転移巣が出現してこないか,等を観察できるので意味のある方法である.これらのことから,我々の大腸癌肝転移に対する治療戦略として,①肝転移巣が3個以内では初回肝切除を行う.4個以上では肝動注化学療法を3~6カ月施行後,治療に対する反応を見て手術適応を決める.②初回肝切除で肝門部リンパ節転移のある例は手術適応ではない.初回肝切除後8カ月以上の無再発期間があって診断された例には,再肝切除+肝門部リンパ節郭清を行う.③肝外病巣として,肺転移が1個の例は転移巣を切除し,複数個では全身化学療法を行う.④肝内転移の分布,腫瘍径を考慮し,術前門脈枝塞栓術等を応用して積極的に肝切除を行うことにしている.
キーワード
転移性肝癌, 結腸癌, 直腸癌, 肝切除, 再肝切除
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