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日外会誌. 104(5): 390-394, 2003


特集

癌外科治療の標準化に向けての展望

4.食道癌

東京歯科大学市川総合病院 外科

安藤 暢敏

I.内容要旨
日本食道疾患研究会では現時点で妥当と考えられる食道癌の標準的な治療法を推奨するために,“食道癌の治療ガイドライン” を作成し,2002年12月に出版した.食道癌根治術(食道切除・再建,リンパ節郭清)の適応となる進行度は,T1N(+),T2, T3であり,右開胸による胸腹部食道全摘,胃小彎リンパ節を含めた小彎側切除,リンパ節郭清は胸部上部食道(Ut)では頸胸腹の3領域郭清,中部(Mt)でも同様であるが,頸部郭清のためのアプローチについては胸腔内から/頸部からとcontroversialである.頸部食道傍リンパ節と深頸・鎖骨上リンパ節とは本来対応が異なり,頸部郭清として一括すべきではない.下部(Lt)に関しても意見の一致はみられない.郭清術式の有効性を科学的に検証するには,ランダム化比較試験(RCT)が必要である.再建は胸骨後経路で再建臓器として胃の挙上がもっとも標準的である.一方欧米では非開胸食道抜去術Transhiatal esophagectomyが広く普及しているが,その背景にはBarrett上皮より発生する下部食道腺癌が急激に増加しているという実態がある.開胸/非開胸は欧米においてもcontroversialであり,オランダのRCTでは合併症発生率には有意差がみられ,有意ではないが開胸郭清群が良好な遠隔成績をもたらすとの結論であった.胸腔鏡下,腹腔鏡下の食道切除・再建術は根治性と低侵襲性に関するevidenceが未だ乏しく,その両立が可能であるか否かを検証することが今後の大きな課題である.術前・術後補助療法の効果に関するevidenceは欧米では比較的多いが,その情報の解釈には欧米と本邦との食道癌の背景の違いを考慮しなければならない.術前化学療法,化学放射線療法の生存期間上乗せ効果はいずれもcontroversialであるが, JCOG食道がんグループのRCTでは術後化療により再発予防効果が認められた.

キーワード
食道癌, 治療ガイドライン, EBM, 3領域郭清

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