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日外会誌. 104(3): 301-304, 2003


特集

外科教育と専門医制度

8.心臓血管外科専門医の立場から

東京女子医科大学 心臓血管外科

黒澤 博身

I.内容要旨
心臓血管手術は社会が求める安全で良質の医療の中でも最も厳しい条件が課せられる分野である(high risk).それ故に手術手技上の優れた能力にとどまらず,informed consentやaccountabilityという医師ー患者関係においても厳しい局面に対処できる能力が要求される.優れた心臓血管外科専門医になるためには難易度Aの手術を安全確実に行えるall round surgeonをまず目指し,続いて難易度B, Cを目指す長期にわたる修練が必要になる.しかし現在の外科専門医制度では基礎外科=一般(総合)外科という構図になっておりその修練期間が長い.サブスペシャルティのための基礎外科とサブスペシャルティそのものである一般(総合)外科を分けないと心臓血管外科の修練開始が遅れる一方,一般(総合)外科専門医の質の向上も望めない.熟練した心臓血管外科医として活躍する年代の高齢化を避けるためにも効率の良い基礎外科修練を経て心臓血管外科の修練に十分な時間(high volume)を割くカリキュラムが必要であり,これにより良質(low risk)の心臓血管外科医療を国民に提供できる.そして心臓血管外科指導医は短期間の基礎外科修練と長期にわたる心臓血管外科修練の両者に共通する教育理念への深い造詣と修練そのものの相違点を理解するという両面を併せ持つことが要求される.さらに長期間の修練により達成される高い専門性に相応した診療報酬の確立も今後の課題である (high risk/volume-high return).

キーワード
心臓血管外科, 基礎外科, 一般外科, high volume-low risk, high risk/volume-high return

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