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日外会誌. 103(11): 803-805, 2002
特集
乳癌手術の現況とその根拠
4.術前療法の効果に基づく術式選択
I.内容要旨乳癌における術前化学療法の考え方は腫瘍縮小による乳房温存率の向上として評価されてきた.術前化学療法の奏効率は70%前後,clinical complete response率は15%前後が期待され,50%前後の乳房温存手術(BCT)施行の成績も見られる.NSABP B-18trialでは,AC(adriamycin 60mg/m
2, cyclophosphamide 600mg/m
2) )4 cycleを術前に投与する群と,術後に投与する群が比較検討された.両群ともにBCTか,乳房切除術のいずれかを受けた.その結果,5年無再発生存率,全生存率において術後群,術前群に有意差を認めなかった.また,両群問に初再発部位,再発率に有意差を認めなかったが,乳房内再発は術前群に高い傾向があった.近年,術前化学療法に使用する具体的な薬剤としては,ADM, CPA以外にtaxanes系薬剤が用いられる.当院では70歳以下で径3cm以上の原発乳癌に対してcoreneedle biopsy(CNB)で確診後, ADM 50mg/m
2およびtaxotere(TXT)60mg/m
2による術前化学療法を3週間隔で4回施行し,術前化療最終回施行約3~4週間程度で手術に移行している.当院の乳癌全手術症例に対するBCT施行率は37%であるが,術前化学療法により腫瘍径が3cm以上であったにもかかわらず,26%の症例でBCTが可能であった.術前化学療法により腫瘍縮小効果が十分に得られれば,大きい腫瘍であっても切除断端陰性のBCTが可能となる.またCNB後,化療施行前に,薬剤の組織学的効果とBCTの可能性を予測するに際しては,組織学的高異型度,HER2,p53が陽性の腫瘍, ER/PRが陰性の腫瘍が良好な病理組織学的効果を示した.
キーワード
術前化学療法, CT scan, 効果判定, 乳房温存療法
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