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日外会誌. 103(8): 564-570, 2002


特集

進行胆囊癌外科治療の現況

7.進行胆囊癌手術の合併症と対策

千葉大学大学院 医学研究院臓器制御外科学(第一外科)

宮崎 勝 , 伊藤 博 , 木村 文夫 , 清水 宏明

I.内容要旨
進行胆嚢癌に対する外科切除術式はその進展様式に応じて種々に亘る.すなわち肝床浸潤型,肝十二指腸間膜浸潤型,腸管浸潤型,リンパ節転移型およびその組み合わせの浸潤型というように,胆嚢癌の浸潤様式は症例毎にさまざまであり,その各々の様式で胆嚢,胆管切除に加えて併施,選択される術式が変わってくる.肝床浸潤に対しては肝床切除,中央下区域切除から拡大右葉,右3区域切除までとなることが多い.また肝門浸潤例に対しては右グリソン浸潤が強固であれば拡大右葉となり,下方進展が強ければ膵頭十二指腸切除となり,場合によっては肝膵同時切除(HPD)となる.また肝門浸潤型では門脈,肝動脈の血管合併切除も必要となる.腸管浸潤型ではその浸潤腸管により横行結腸部分切除,胃十二指腸切除あるいは膵頭十二指腸切除が胆嚢・胆管切除に併施されることになる.この様にstage III, IVといった進行胆嚢癌の手術侵襲は極めて大きいものとなるため,その合併症発生率は50%前後と高く,また手術関連死亡率も7~20%前後と報告されており,特に拡大肝葉切除群では30~43%とさらに高いものとなっている.またHPDの手術関連死亡率は依然と高く,25~33%である.さらに門脈・肝動脈といった血管合併切除群では13~67%という高い死亡率である.
これら手術関連死亡を回避できる方策として肝切除については肝切除量を極力少なくした肝実質温存術式(肝中央下区域切除のような)を可能なかぎり選択すること,また術前門脈塞栓術の併施により実質肝切除量を低下させることなどが挙げられる.HPD例では膵空腸吻合の二期的手術も一つの方策かもしれない.血管合併切除に関しては門脈切除再建はほぼ安全に施行し得るものと考えられるが肝動脈浸潤例では,右肝動脈のみの切除を行い左肝動脈が温存し得る場合には肝門板において左右肝管の交通が保たれるのであれば葉間動脈を介した血流が期待されるため,左右肝管のグリソンを切離せずに胆管切離を行うようにすれば,重篤な合併症発生は回避できる.このように進行胆嚢癌の外科切除では高率に致死的になりうる合併症発生が予想されるため,その手術適応および術式選択には細心の注意が必要である.

キーワード
胆囊癌, 術後肝不全, 肝膵同時切除, 血管合併切除, 閉塞性黄疸

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