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日外会誌. 103(8): 543-548, 2002


特集

進行胆囊癌外科治療の現況

3.胆囊癌に対するS4下S5切除-適応と手術の要点

東北大学大学院 医学系研究科外科病態学消化器外科学分野

海野 倫明 , 鈴木 正徳 , 片寄 友 , 竹内 丙午 , 力山 敏樹 , 松野 正紀

I.内容要旨
胆嚢癌は画像診断や手術法が改良された現在においても,治療成績が不良な癌腫の一つである.当教室では壁深達度ss and/or hinf0-1aが予想される胆嚢癌の手術術式として拡大胆嚢摘出術を施行してきた.拡大胆摘術は肝切除範囲が定められておらず施設問で手技や切除範囲が異なっていることから,明確な定義が望まれていた.また,我々はCT-APを用いた胆嚢静脈還流域の研究から,胆嚢静脈は96.7%が肝S4下とS5に流入することを明らかにしてきた.現在,当教室ではss and/or hinf0-1aが疑われるS1胆嚢癌症例に対して,S4下S5肝亜2区域切除術を標準術式として症例の集積に努めている.S4下S5切除術は, surgical marginの確保のみならず胆嚢静脈の還流域を一括して切除可能であることから,潜在している微小血行性転移の切除の点で有利であると考えられる.本手術の要点は,(1)膵頭部の授動と膵後面リンパ節郭清,(2)肝十二指腸間膜の骨化,(3)S4下への門脈枝(P4下)の処理,(4)S5-8境界の肝切離(5)肝門板を含めた肝切除,である.当教室では1991年に本手術を導入し,現在まで計12例を経験した.観察期間は短いが,本術式導入後の12例は全員が生存しており,特に重篤な合併症もなく,拡大胆嚢摘出術と比較して手術成績は良好と考えられた.

キーワード
S4下S5肝亜2区域切除, 胆囊癌, 拡大胆囊摘出術, 胆囊静脈還流域

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