[書誌情報] [全文PDF] (3387KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 103(6): 457-462, 2002


特集

癌の分子診断学-ここまで進んだ診断・治療への応用-

2.食道癌

慶應義塾大学 医学部外科

小澤 壯治 , 北川 雄光 , 北島 政樹

I.内容要旨
最近の20年間に分子生物学的解析法の進歩により,食道癌における遺伝子異常や分子異常と臨床腫瘍学的特徴の関連性が徐々に明らかとなり,悪性度診断や新しい治療法の開発に結びつきつつある.たとえばc-erbB増幅やcyclinD1は予後因子となるばかりではなく,それぞれリンパ節転移および遠隔臓器転移と関連する.p53遺伝子異常が予後因子となるかについてはcontroversialであるが,本邦では予後因子にはならないとする考えが有力である.p16遺伝子異常は免疫染色法の導入により予後因子,リンパ節転移因子として捉えられている.またtelomerase活性が癌細胞に特徴的であることを利用して,食道癌細胞の高感度検出法が考案されている.またcomparative genomic hybridization(CGH)法やcDNA microarray法による新しい研究が進められている.一方,治療については遺伝子・分子異常によるテーラーメード治療の提唱が1990年代から行われてきたが,多施設共同の臨床試験により検証する必要がある.最近では分子標的治療薬としてEGFRのtyrosine kinase inhibitorやモノクローナル抗体などが注目されている.また,千葉大学で開始されたp53遺伝子治療もその成果が期待される.今後は化学放射線療法の効果を予測する遺伝子異常の検討がますます重要になると考えられる.

キーワード
食道癌, 遺伝子異常, 分子異常, 癌遺伝子, 癌抑制遺伝子

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。