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日外会誌. 102(12): 851-855, 2001
特集
各科領域の抗菌薬ガイドライン
5.肝胆膵外科領域の抗菌薬ガイドライン
I.内容要旨肝,胆道,膵の一次感染症およびその外科領域における術後感染予防と術後感染発症時の抗菌薬使用法の基本原則について述べた.
肝胆膵感染症は,一次感染では腸内細菌のbacterial translocationによって門脈血行性に到達した細菌によって発症する.その分離菌は大腸菌,肺炎桿菌,緑膿菌などのグラム陰性桿菌か,または腸球菌などのグラム陽性球菌か,バクテロイデスなどの嫌気性菌である.したがって,肝胆膵外科領域における抗菌薬は,患者のリスクや菌血症合併の有無に応じて胆汁中移行の良い第2世代セフェム単独ないしβ-ラクタマーゼ阻害剤との合剤を選択する.
一方,肝胆膵外科領域における術後感染発症阻止としての,いわゆる予防の目的には,手術野の胆汁または腸内容による汚染度により,準汚染手術には第2世代セフェムを,汚染手術には第4世代セフェム,菌血症合併例には抗菌力とその抗菌スペクトラムの広さからカルバベネムを選択し,術後早期,できれば4日目には術後感染発症の兆候の有無を判定する.
術後感染症の発症が明白な時には,①胆汁の採取,②細菌培養と,③膿瘍ドレナージを速やかに実施する.Empiric therapyを開始する際には,先行抗菌薬投与が行われている場合には,まず緑膿菌,腸球菌,MRSAを想定する.これらの菌に対して,それぞれ鑑別診断しながら,菌の分離状態に応じてカルバペネム,またはバンコマイシンやテイコプラニンなどを適切に選択する.肝胆膵外科領域のドレナージ後に検出されるMRSAはドレーンを介する逆行性感染であることが多く,院内感染対策も併せて行うべきである.また,カルバペネム耐性の緑膿菌やバンコマイシン耐性の腸球菌にも注意する.
キーワード
術後感染, ガイドライン, 早期診断, ファジイ理論, 抗菌薬の胆汁中移行
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