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日外会誌. 102(11): 805-809, 2001
特集
肝臓外科における血行再建
5.肝癌における肝静脈切除再建の適応と手技
I.内容要旨肝癌に対する肝S7+S8切除において右肝静脈再建の適応についての結論は出ていず,議論の多いところである.右肝静脈は結紮されても臨床的には問題ないと言われてきたが,我々は肝静脈結紮例で肝実質が変色した,変色はしなかったがGOT, GPT, LDHが高値になった,あるいは右肝静脈結紮後再肝切除が必要な例で肝内静脈交通枝の発達のため静脈系の出血が制御できなかったなどの症例を経験した.我々は,肝内静脈間交通枝がない,右下肝静脈がないかあっても細い,中肝静脈がS6まで至っていない,などの患者に対してS7+S8切除,右肝静脈再建を行った.6例に自家静脈グラフト移植,3例にパッチ移植,1例に直接端端吻合を行った.1例が合併症で術死したが,9例に長期開存を認めた.近年,生体肝移植においてドナーの残肝,移植グラフト肝ともに肝静脈の鬱血による機能低下について研究されつつある.幕内らによると肝静脈を結紮して門脈血が逆流する例のうち肝動脈を遮断して肝実質の変色が見られる例ではその領域の肝機能低下が起こる可能性があり,このような例には肝静脈再建が必要であると述べている.
今後,肝静脈の結紮後門脈血流,肝動脈血流の動態を検討しつつ肝静脈再建の適応が決定されるようになろう.肝静脈の再建について考察し,その手技について述べた.
キーワード
肝癌, 肝静脈再建, 血行再建, 肝切除
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