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日外会誌. 102(7): 548-553, 2001


総説

医療事故と届出義務-手術と異状死をめぐって

JR東京総合病院 

古瀬 彰

I.内容要旨
第101回日本外科学会総会の初日に,診療に関連した異状死について外科系11学会の共同声明が発表され,最終日には医師の警察への届出義務一とくに手術と異状死をめぐって公開討論会が開かれた.筆者はこの声明の作成に関わり,また公開討論会の司会者として基調講演を行ったので,基調講演の要旨と討論の概略を本稿にまとめることとした.
医療事故の警察への届出の詳細については法律的にも曖昧な点が多い.医師法第21条には死体を検案して異状があると認めた医師は24時間以内に警察に届出る義務があることになっているが,この条文の本来の趣旨は医師が殺人などの犯罪捜査に協力することにある.しかし1994年に日本法医学会が「異状死ガイドライン」を発表し,診療中の予期せぬ患者死亡も異状死に含めて以来,医師法第21条が医療事故届出の根拠とされるようになっている.このガイドラインには臨床医として受け入れがたい内容が含まれているため,日本外科学会は臨床系学会として一定の見解を発表すべきであるとの立場に立って,リスクマネージメント委員会で検討を行い,今回の共同声明を行った.
その内容は,①明らかな医療過誤による死亡や重大な傷害では届出を必要とする,②予測される手術合併症による患者死亡は届出不要である,③医療事故に関する届出を受けて調査・勧告を行う中立的専門機関を創設する,という3点である.
日本外科学会としては,今後届出に関する具体的なガイドライン作成に取り組むとともに,各方面と協力して中立的専門機関の設置に努力しなければならない.

キーワード
医療事故, 医療過誤, 届出義務, 異状死, 医師法, 刑事訴訟法

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