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日外会誌. 102(6): 465-472, 2001


特集

リンパ節の癌転移病態と至適郭清

4.乳癌における至適リンパ節郭清

1) 大阪大学大学院 医学系研究科病態制御外科
2) 大阪大学大学院 腫瘍外科

増田 慎三1) , 玉木 康博2) , 野口 眞三郎2)

I.内容要旨
乳癌における腋窩リンパ節郭清の意義は病期の把握と局所制御である.術後補助療法は腋窩リンパ節の転移状況を基に決定される,腋窩リンパ節郭清や放射線治療が生存に影響を与えるという事実は現在のところ明らかではないが,議論の多い問題である.現在の腋窩リンパ節に対する標準治療は,Level l+IIの部分郭清術であり,もしそれらのリンパ節に転移があれば,Level lllまでの完全郭清が局所制御の観点から推奨される.しかし,腋窩郭清には上肢浮腫や知覚異常などの副作用も高率に伴うため,郭清範囲は治療効果と副作用のバランスを症例ごとに的確に評価した上で決定すべきである.
胸骨傍リンパ節については,手術や放射線治療が生存に効果があるかについての無作為対照試験は否定的な結果が多い.しかし,臨床上,腫大の見られるリンパ節やある一部の症例については,郭清もしくはサンプリングする事がその病期診断に有用な場合もあり得る.局所制御の点からみた胸骨傍リンパ節の治療法についても現在結論はでていない.
浸潤癌で実際に転移のある症例は30~40%であるから,もし低侵襲な方法で腋窩リンパ節の評価ができれば,多くの症例で腋窩郭清術を省略することが可能である.つまり,センチネルリンパ節生検の概念は将来有望であり,臨床応用に向け,欧米ではNSABP B-32などの臨床試験が進行中である.

キーワード
乳癌, 腋窩リンパ節, 局所制御と病期診断, 胸骨傍リンパ節, センチネルリンパ節生検

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