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日外会誌. 102(5): 412-416, 2001


特集

大腸癌肝転移に対する治療戦略-基礎から臨床へ-

10.遺伝子治療の将来性

大阪大学大学院 病態制御外科

山本 浩文 , 関本 貢嗣 , 門田 守人

I.内容要旨
大腸癌肝転移の攻略は,大腸癌治療成績向上のための必須課題である.手術療法は一定の効果を示しているが,多発進行例の治療は極めて困難である.大腸癌肝転移に対しての遺伝子治療は,国内ではまだ行なわれていないが,米国ではPhase l-IIの臨床研究が始まっている.これには,自殺遺伝子,免疫遺伝子,癌抑制遺伝子(p53)を利用したもの,あるいは腫瘍内増殖型ウイルスによるものなどが含まれる.基礎研究からみると,多くの遺伝子の質的・量的異常が大腸癌の転移に関わっていることがわかる.遺伝子の種類は多岐に渡り,細胞周期,接着,浸潤,血管新生,癌遺伝子,癌抑制遺伝子などに関する遺伝子群が転移と関連づけられて報告されている.これらの遺伝子異常をすべて修復することは不可能であるが,科学の歴史はひとつのkey遺伝子を操作することで癌細胞に大きなダメージを与え得ることを証明してきた.このような性質はCancer hypersensitivityあるいはGene addictionと呼ばれている.腫瘍よりも肝細胞の方が遺伝子を取りこみやすい性質に着目した治療戦略や,新規の変異ウイルスを使った方法も開発されてきている.遺伝子治療のさらなる飛躍には,安全でかつ効率のよい遺伝子デリバリーシステムの開発が急務である.

キーワード
大腸癌, 肝転移, 遺伝子治療

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