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日外会誌. 102(4): 310-314, 2001


特集

弁膜症手術の最近の動向

3.大動脈弁形成術の適応と成績

京都府立医科大学 心臓血管外科

北村 信夫 , 夜久 均 , 山岸 正明 , 嶌田 泰之

I.内容要旨
弁膜症に対する外科治療の歴史上“弁置換術”は耐久性,血行動態にも優れた人工弁の登場と共に,それまで,大動脈弁狭窄症(AS)に広く適応されていたBalloon Aortic Valvuloplasty(BAVP)や,大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対する弁尖の形成術式に代わる外科治療の第一選択手技として発展してきた.
しかし,ここ10年来,開心術成績の著しい向上,安定化と共に,術後のより優れた血行動態,術後遠隔期の優れたQuality of Life(QOL)が益々強く求められだした.その結果,弁置換術では機械弁そのものによる術後合併症や,終生必要となるワーファリン・カリウムによる抗凝固療法,生体弁ではその長期耐久性などに,まだ問題が多いことから,人工弁を使用しない自己弁温存術式としての弁形成術が再び見直され,同時に新しい形成術式も導入されてきた.
特に僧帽弁膜症において,近年,リュウマチ性弁膜症の減少と組織変性弁膜症の増加傾向により弁形成術の適応が拡大し遠隔期成績も弁置換術に優るとの成績結果が次々出始めたことから大動脈弁に対しても弁形成術の見直し傾向が強くなって来ている.このような状況の中,今までの大動脈弁形成手技ではその適応が限局されることと,その長期遠隔成績はあまり期待できないとされていた.しかし近年,弁形成術の見直し傾向と共に,色々工夫された新しいテクニックでは術後短期成績は十分満足でき,さらに今後の長期遠隔成績,QOLも期待されているのが現状と言える.

キーワード
大動脈弁形成術, 大動脈弁置換術, 自己弁温存術式

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