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日外会誌. 102(3): 262-265, 2001


特集

外科学-新しい潮流

I.21世紀の外科学会への提言
3.日本外科学会は外科系基幹学会として何をなすべきか?
本道は総論,教育および医政にあって,各論にはない

慶應義塾大学 看護医療学部開設準備室

吉野 肇一

I.内容要旨
創立以来1世紀が経過して,外科系基幹学会と自他ともに認めている日本外科学会(以下,本会)がこれから歩むべき道は,学問的には外科学総論を中心とし,他に外科系教育と医政に力を集中すべきである.
本会創立時は外科系学会として,本会が唯一であったと思われ,その時点では外科系すべてを扱っていたことは当然である.ところが,外科学の分化に伴い,現在では,消化器,呼吸器,循環器,小児(順不同,以下同様)などそれぞれでサブスペシャル専門学会が稼働している.このような状況では,外科学各論はそれぞれの専門学会に任せるべきである.
2004年からの医師卒後初期臨床研修2年間の必修制度に合わせ,本邦全体で専門医制度の改革が叫ばれている.外科系では,上記サブスペシャルティ専門学会が提唱する専門医養成コースは,基幹学会としての本会が実地業務を行う外科専門医の取得の上に,いわば外科専門医が1階で,それらが2階部分のように行われることになっている.
これらを勘案すれば,本会が,どの分野の外科にとっても共通で,かつ,外科の考え方の基礎となる外科学総論を学問的検討の中心に置くことは当然といえる.
同様なことは,外科系の教育体系の確立や,医政への参画にもいえる,外科医の一生を考えた施策を打ち出し,若者の外科医離れに歯止めをかけなければならない.
このように考えると,本会学術総会のあり方は,従来の何でもありの百貨店方式をあらため,外科学総論とサブスペシャルティ学会からの教育的講演を主にすべきである.このようにしてはじめて本会学術総会が,外科専門医取得・維持のためのクレジットとしての意味を持つ.
本会がこのような道を歩むことにより,サブスペシャルティ専門学会と共存・共栄し,国民福祉の向上に効率的に寄与できる.

キーワード
日本外科学会, 外科系基幹学会, 学会の在り方

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