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日外会誌. 102(2): 220-225, 2001


特集

肝膵同時切除術(HPD)をめぐって

6.HPDの術後合併症

埼玉医科大学 総合医療センター外科

高浜 龍彦

I.内容要旨
肝膵同時切除術後の合併症について全国集計および諸家の報告からその実態を調べあわせて対策を検討した.水本らの全国集計241例において手術死亡率は17.0%,肝2区域以上切除例では39.7%の高率であった.中村らの全国集計478例では,全体としては手術死亡率13.6%,在院死亡率16.9%,肝2区域以上の切除例では,在院死亡率は30%に達している.在院死亡81例中75例,92.6%が術後肝不全を併発しており,主たる死亡原因であった.在院死亡率に関連する危険因子としては,年齢(60歳以上,とくに70歳以上が危険),肝切除範囲(肝2区域以上が危険),肝動脈,門脈等の血管合併切除の有無(血管合併切除例が危険),門脈切除例の一時的肝血行バイパスの有無(バイパス施行例が危険)があげられた.諸家の報告でも肝2区域以上切除例では18%~60%の高い在院死亡がみられ肝不全が主たる要因であった.術中肝静脈血酸素飽和度のモニターは有用であり,術中60%以下低下時間の和と術後総ビリルビン値最高値の間には有意の正の相関を認めた.術中,肝脱転時,Pringle法施行および肝十二指腸間膜内,上腸問膜動脈周囲リンパ節郭清の際あるいは膵頭部と門脈の剥離時にリアルタイムに肝静脈血酸素飽和度低下が認められた.尾状葉全切除および前述の血管合併切除あるいは肝血行一時バイパスなど術後肝不全発症危険因子は,術中肝虚血に起因するものと考えられる.術後肝不全防止の第一歩はこれらの点に注意し,肝虚血時間が最小限になるよう工夫することである.
術後管理においては,肝機能が安定,回復軌道に乗るまでは人工呼吸器による陽圧呼吸,十分な輸液とinotropic agent投与による臓器血流の確保,門脈血酸素飽和度の高値維持が有用である.
膵腸吻合,胆腸吻合縫合不全には,肝機能低下による蛋白合成能低下,創傷治癒能低下が大きく関与しているが,術後肝不全防止とともに,残肝の肝動脈血行再建,膵腸吻合法の工夫,適切なドレナージが肝要である.

キーワード
胆膵同時切除, 術後合併症, 術後肝不全

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