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日外会誌. 101(12): 861-864, 2000
特集
臓器別にみた外科手術の変遷・歴史
8. 大腸癌
I.内容要旨直腸癌標準術式としての腹会陰式直腸切断術(Miles 1908)は,わが国では久留(1940)によって広められた.その後,肛門温存術(前方切除術)が欧米では1930年後半から,わが国では1960年代から積極的に行われるようになり,その後わが国では側方拡大郭清術が主流となった.しかし,術後の性機能障害,排尿障害の頻度と転移頻度を考慮した結果,自律神経温存術が登場し,最近ではこれが主流となりつつある.器械吻合が前方切除術に果たした役割は大きい.
最近,イギリスのHealdらがtotal mesorectal excision(TME)という新しい概念を提出し,著しく低い局所再発率(≦3%)を報告した結果,TMEは世界的な流行となっている.側方拡大郭清の意義はほとんど認められていないのが現状であるが,この術式の真の適応とその意義を明らかにすることが今後の課題である.直腸癌手術は拡大手術から縮小手術へと変遷しつつあり,様々な局所切除術が行われている.腹腔鏡補助下手術も登場した.最近,欧米では術前放射線治療,放射線化学療法の効果が注目されているが,わが国ではこの方面での関心が薄く立ち遅れている.肝転移の治療は手術が第一選択であるが,高危険群の選別による効率的な早期診断・早期治療法の確立,補助化学療法の確立が必要である.ゴールは個々の癌に合ったオーダーメイド治療を行うことであり,大腸癌ではそれが可能であろう.
キーワード
直腸切断術, 肛門機能温存術, 前方切除術, 自律神経温存術, TME
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