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日外会誌. 101(12): 840-846, 2000
特集
臓器別にみた外科手術の変遷・歴史
5. 肺癌
I.内容要旨肺癌の手術はGraham(1933)による単純肺摘除術に始まるが,わが国ではそのわずか4年後に小沢による長期生存例が報告されている.残念ながらわが国では第2次大戦によって,気管内全身麻酔の普及が中断され,欧米に大きく遅れた.戦後,わが国では石川(1949)の原発性肺癌3手術例の報告に始まるが,昭和30年代,40年代とも欧米に比べて,症例数,手術成績も劣っていた.また術式も,わが国の黎明期では腫瘍摘出が多用されたが,欧米では肺切除が主体であり,解剖学的肺切除(肺動脈,肺静脈,気管支の別個処理による切除法),続いてリンパ節郭清を伴う,いわゆる根治的肺切除が行われるようになった.
1960年代以降の,わが国での肺癌症例の指数関数的増加により,手術症例も飛躍的に増加し,日本肺癌学会の発足,肺癌取扱い規約の制定などと共に,試験開胸術の減少,切除率の向上,手術死亡率の減少がみられると同時に,わが国独自の術式の開発もみられ,それらの成績は,今日では欧米を凌駕するに至っているといっても過言ではない.
術式では他臓器合併切除,気管支形成術,気管分岐部形成術,拡大リンパ節郭清術などが開発された.また,画像診断,内視鏡検査の進歩に伴い,組織型,病期を勘案した合理的な手術適応の決定,治療方針の決定が可能となった.更に最近では,小型肺癌の発見率が著増してきており,これらの中から,症例を選択して縮小手術,胸腔鏡手術も行われQOL面から患者への大きな福音となっている.
手術成績の変遷では手術死が初期には20~40%の時期もあったが,やがて10%以下に低下し,最近では数%と著減した.また,切除例全体の5年生存率も初期には10~20%であったが,最近の成績では,30~50%向上した.しかし,I期例の手術成績は良好であるが,III期(特にN2例)の成績向上にためにinduction therapyが試行されている.
キーワード
肺癌外科治療, 手術死, 生存率, 気管支形成術, 拡大手術
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