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日外会誌. 101(8): 550-555, 2000


特集

内視鏡外科の基礎と臨床

7.呼吸器外科領域,特に原発性肺癌に対する胸腔鏡手術

済生会中央病院 

成毛 韶夫

I.内容要旨
「より少ない侵襲で完全な診断と治療」,最高の技術で,少しでも痛みを伴わない,入院期間も短く,医療費も患者の負担にならない医療を誰もが望むところである.治療は,その人の仕事や,生活にまで心を配る温かい支えが必要であり,一人一人の人生に対する丁寧で温かい医療が重要である.20世紀末に目覚ましい発展を遂げた胸腔鏡手術は,従来の開胸手術に比べて患者への侵襲が少ないという際立って大きな利点を有している.手術に伴う疼痛を軽減し,入院期間を短縮し,術後のQOL=生活の質を著しく向上させることを可能にした.
日本胸部外科学会において1999年度に報告された,1997年の全国集計によれば570施設から呼吸器外科領域の全手術症例数が34,987例あり,うち10,290例:29.4%が胸腔鏡手術で行われている.最も多いのが,気胸の手術の76.7%がVATSで行われており,次いで良性腫瘍の58.5%,炎症性疾患の38.8%,気胸を除くBullous diseasesは44.5%に,胸膜腫瘍:38%,転移性肺腫瘍:30.2%,であった.
腫瘍性疾患に対する胸腔鏡手術も徐々に拡大普及しつつあり,肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除術も11,323例中539例:4.7%に行われ,縦郭郭清も可成り可能になってきた.適応とされているT1 N0 M0例の生存率も満足すべきよい結果がえられている.
肺・縦隔疾患すなわち呼吸器領域における胸腔鏡手術の現況および肺癌にたいする胸腔鏡手術について述べた.

キーワード
胸腔鏡下手術, 呼吸器外科領域, 胸腔鏡手術の現況, 肺癌, 胸腔鏡下肺葉切除術, 治療成績

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