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日外会誌. 101(4): 352-356, 2000
特集
食道アカラシアにおける治療最近の動向
7.食道アカラシアに対する腹腔鏡下手術
I.内容要旨アカラシアに対する腹腔鏡下手術は1991年にShimiらが筋層切開術を最初に症例報告したのが最初である.その後欧米や本邦で次第に施行されるようになり,現在では腹腔鏡下Heller and Dor手術が第一選択と考えられている.教室での手術適応は,Caプロッカーによる薬物療法やバルーン拡張療法に抵抗性の症例や,また夜間臥床時の食道内貯留液逆流による咳嗽頻発症例としていた.しかし,Csendesらが外科的治療が優れていることを報告し,腹腔鏡下手術の低侵襲性を考慮すると,薬物療法の奏功例や手術拒否例,併存疾患のための手術不能例を除いて,すべてのアカラシア症例が腹腔鏡下Heller and Dor手術の適応と考えられる.教室で施行した22例については,平均手術時間は4時間9分と開腹法の約1.8倍の時間を要したが,術後腸蠕動確認時期は本法3~18時間で蠕動開始が早期から認められた.通過障害はすべての症例で改善し,内圧検査でLESPは術前平均36mmHgから術後14mmHgへ減少し,これらの内圧検査所見は開腹手術と同等であった.内視鏡検査と24時間pHモニタリング検査により胃食道逆流症を認めず,また術後合併症の発生もみなかった.粘膜外筋層切開操作中に3例(13.7%)で粘膜損傷が生じたが,腹腔鏡下に4-0吸収糸を用いて体内結紮法で縫合閉鎖した.教室では(1)flexible電子腹腔鏡を用いた死角のない視野確保,(2)気腹法による食道裂孔周囲の視野展開,(3)腹腔内に留置した半切ガーゼによる血液や浸出物の除去,(4)LCSを用いた剥離・授動・筋層切開操作による手技の簡略化,(5)直針を用いた体外結紮操作による縫合結紮操作の迅速化・簡略化,(6)彎曲針を用いた体内結紮操作の修得による粘膜損傷への適切な対応などが重要事項と考えている.本法は高い治療効果と低侵襲性の観点から現在の標準術式として妥当であり,今後はその低侵襲性の特徴を生かして手術適応が拡大するものと期待される.
キーワード
食道アカラシア, 腹腔鏡下手術, Heller and Dor 手術
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