日外会誌. 100(8): 497-499, 1999


特集

大動脈瘤に対するステント人工血管内挿術

7.合併症

康生会武田病院 心臓血管外科

井上 寛治

I.内容要旨
ステントグラフト内挿術は最近急速に普及しつつあるが,その合併症は低率とはいえない.エンドリークの残存は瘤破裂につながる可能性が高く,深刻な問題となっている.主な原因として,宿主血管とステントグラフトとの密着不良や側枝からの逆流がある.宿主血管に高度な屈曲や石灰化がある場合は,密着が不良となりリークが発生しやすい.側枝からの逆流に対しては,Coil embolizationを施行し側枝の血流を遮断することにより,ある程度対処できるが,技術的に困難な場合もあり,早急な解決策を講ずる必要がある.現在までに報告された重大な合併症として,死亡,動脈瘤破裂,塞栓症,対麻痺,graft migration等があげられる.肋間動脈再建が不能であるということはこの手技のアキレス腱であり,胸部領域の治療では対麻痺の発生が危惧される.また,動脈硬化病変を有する血管内の操作による広範な微小塞栓症は,死亡を招く恐れがあり,無理な操作は禁物となる.新しい治療法ゆえ,今後さらにデバイスおよび手術手技の改良を加え合併症を防止すると共に,発生した合併症に対し早急かつ適切に対処できる体制を整えておくことが重要と思われる。

キーワード
エンドリーク, 塞栓症, 対麻痺, 死亡, 動脈瘤破裂

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