[書誌情報] [全文PDF] (1834KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 100(6): 394-398, 1999


特集

最近の発生学的研究が新生児臨床の進歩にもたらしたもの

7.胆道閉鎖症

東北大学 医学部小児外科

仁尾 正記 , 舟木 伸夫 , 岩見 大二 , 大井 龍司

I.内容要旨
胆道閉鎖症(以下本症)は新生児,乳児早期の外科的肝胆道疾患の中で最も重要なものであるが,その病因は未だ不明である.最近の研究の中から,とくに本症の病因・発生に関わるものとして,Balb/c新生マウスにrotavirusを感染させることにより作成された本症の動物モデルに関する研究,その他のウイルス(papillomavirus, reovirus, cytomegalovirusなど)との関連,HLAとの関連,臓器錯位関連遺伝子との関連等を紹介する.また最近のわれわれの研究から,本症の肝内胆管上皮におけるアポトーシスの高い発現と,高いKi67と低いp27の発現から細胞増殖の亢進を認め,本症肝内胆管が組織動態的にはremodeling異常の状態にあることが示唆された.本症では,出生前後から新生児期,さらに乳児早期にかけて,肝胆道系に広範な炎症性変化が生じることが考えられる一方で,胎生期のかなり早い時期に既に異常が始まっている例もあり,成因の違いによるものとして理解される.また,本症は,単一の因子ではなくいくつかの外的・内的因子が複合した結果生じること,それぞれの因子の組み合わせ自体も複数存在すること,本症の表現型の多様性は成因自体の多様性に由来すること等の可能性が考えられる。

キーワード
biliary atresia, embryology, pathogenesis, apoptosis, ductal plate malformation

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。