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日外会誌. 100(6): 388-393, 1999
特集
最近の発生学研究が新生児臨床の進歩にもたらしたもの
6.直腸肛門奇形(鎖肛ブタモデルの検討)
I.内容要旨小児外科領域において直腸肛門奇形(鎖肛)は新生児外科疾患としては最も頻度の高いものである.この奇形の発生学に関しては現在まで教科書的説明は100年以上前に正常胎児の研究より成立したものであり,十分な説明を与えていなかった.そこで過去には存在しなかったブタ鎖肛胎仔を対象とした研究を展開した.
実験的交配を繰り返した結果,自然発生のブタ鎖肛の大量生産が可能になり,鎖肛ブタ胎仔をfreshな状態で得ることが可能になり発生学的研究が成り立った.24~60日齢の胎仔の連続矢状断切片を主として用いた.
鎖肛の発生機序に関しては,生殖結節の正中線状に総排泄腔より表面に至る薄い板状のcloacal plateが存在するが,この尾部に近い部分の欠損が鎖肛の発生原因と考えられる.この為,直腸は皮膚面に誘導されず,直腸に続くdorsal cloacaにより将来の尿生殖洞との連絡を保ち,雄では直腸尿道瘻を残す高位鎖肛となるものである.正常では直腸に続くdorsal cloacaの部分が肛門管を形成することを述べた.また内肛門括約筋は直腸下端の輪状筋が肛門管を形成したdorsal cloacaの部分まで下降して成立したものであることを述べた.同様な理由で鎖肛における瘻孔には内肛門括約筋が下降している.
系統発生学的には脊椎動物はすべて総排泄腔を持つが,進化が哺乳類に至り成体では総排泄腔は尿生殖洞と直腸肛門に分離している.従って胎仔期に総排泄腔を持つのみである.進化の過程で獲得した総排泄腔分離の為の遺伝子に障害が起こり鎖肛が発生するものと考察している.現在鎖肛関連遺伝子を検索中である.
鎖肛治療の改良に至る発生学的な新知見についてはこれからの研究の成果に待ちたい.
キーワード
直腸肛門奇形, ブタモデル, 総排泄腔, cloacal plate, 内肛門括約筋
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