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日外会誌. 100(6): 366-372, 1999


特集

最近の発生学研究が新生児臨床の進歩にもたらしたもの

2.家兎胎仔横隔膜ヘルニアの胎内治療とその肺低形成への効果

秋田大学 医学部小児外科

加藤 哲夫 , 吉野 裕顕 , 蛇口 達造 , 水野 大

I.内容要旨
生後24時間未満発症の先天性横隔膜ヘルニアの救命率は現在なお40~60%と低率で,高度肺低形成が死因のほぼ3分の2を占める.本症の治療成績の向上に大きな障害として立ち塞がる高度肺低形成を克服する手段として胎内治療の妥当性を知るべく,家兎胎仔先天性横隔膜ヘルニアモデルに対し胎内修復を行い肺低形成改善効果を検討した.
胎齢22日(妊娠期間:31日)の家兎胎仔に子宮開創,横隔膜穿破法により先天性横隔膜ヘルニアモデルを作成し,一部のモデルには胎齢26日に胎内修復を行った.胎齢29日には帝切にて胎仔を回収した.実験群をヘルニア非修復群(I群),ヘルニア修復群(II群)および同腹の対照群(III群)に分類し,体重,肺重量測定後,肺に関し生化学的,組織学的および生理学的検討を行った.
ヘルニアモデル作成成功率は90例中81例(90%),修復成功率は50例中25例(50%)であった.体重に関し,群間に差はなかった.全肺重量・体重比はII群はI群に比べ,有意(p<0.01)に大きかった.全肺DNA量はII群はI群に比べ有意(p< 0.01)に多かった.単位肺重量当たりのDSPC量はI,II群間で差はなく,いずれもIII群より有意(それぞれp< 0.05, p< 0.01)に多かった.肺の光顕では末梢気腔,肺細葉ともI群はII群に比べ,明らかに未熟であった.
肺単位面積当たりのII型肺細胞はI,II群間で差はなく,いずれもIII群より多かった. Pressure-VolumecurveではII群がI群に比べ有意(p< 0.01)に高値であり,II群, III群間では差はなかった.肺胸壁コンプライアンスでもII群がI群に比べ有意(p< 0.05)に高値であり,II群とIII群とで差はなかった.
以上より先天性横隔膜ヘルニアに対する胎内治療は,肺構成細胞の増殖および肺細葉,末梢気腔の分化発生を促進するのみならず,呼吸機能を対照群値までcatch upさせることから,本症に随伴する肺低形成に対する有効な予防ないし治療手段と結論し得る.肺サーファクタントに関しては今後なお検討を要する.

キーワード
先天性横隔膜ヘルニア, 肺低形成, 胎内治療

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