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日外会誌. 100(5): 331-334, 1999


特集

腹部臓器の虚血-病態の基礎と臨床-

3.肝切除における阻血法の実際

東京大学 肝胆膵・人工臓器移植外科

佐野 圭二 , 高山 忠利 , 幕内 雅敏

I.内容要旨
肝切除の際に肝阻血を行うことによって出血が制御可能となり,肝切除の安全性が飛躍的に向上した.肝十二指腸靭帯をクランプして肝への送血路を止めるPringle法は簡便にしてかつ確実に出血をコントロールする方法として有効な阻血法であるが,それが長時間に及ぶと全肝に対する温阻血と腸管のうっ血による弊害が問題となりうる.われわれは肝離断に関与する領域のみの阻血に必要な動門脈を選択的にクランプすることにより,その弊害を軽減させることを行なってきた.
今回当科において施行された肝切除症例を阻血法別に検討し,各阻血法の安全性と限界の解明を試みた.選択的阻血法の症例群には区域切除や亜区域切除が多く,肝離断に要した時間が長かったにもかかわらず,術中出血量はPringle法と比較して差がなく,術後血清総ビリルビン値や肝逸脱酵素の上昇も軽度であった.また術後合併症発生率も差がなく,両群合わせて在院死を認めなかった.また選択的阻血法を応用した生体肝移植ドナー手術によって,ドナー手術の安全性と,グラフトの良好なviabilityを保つことによるレシピエントの良好な予後を得ることに成功してきた.
肝阻血による肝障害に関して現時点ではいまだ不明な点が多いため,症例によっては残肝に対する障害の少ない選択的阻血法を用いてきたことが,肝切除後良好な予後を得ることのできた要因のひとつであると考える。

キーワード
肝切除, Pringle法, 選択的阻血法, 生体肝移植, 合併症

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