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日外会誌. 100(5): 319-324, 1999


特集

腹部臓器の虚血-病態の基礎と臨床-

1.虚血再灌流障害における好中球と血管内皮細胞のinteraction

熊本大学 医学部第2外科

山口 康雄 , 小川 道雄

I.内容要旨
虚血再灌流障害時には,細胞内骨格蛋白や情報伝達蛋白によるインサイド/アウトシグナル伝達を介して各種の接着分子の活性化が起こり,活性化好中球と血管内皮細胞の接着が起こる.更に,接着によって生じるアウトサイド/インシグナル伝達を介して,好中球から活性酸素や各種のプロテアーゼが遊離され,組織障害が引き起こされる.活性化好中球から遊離される好中球エラスターゼの刺激により,単球やマクロファージからCC及びCXC-ケモカインの産生が亢進する.CC-ケモカインであるMCP-1の刺激で,血管内皮細胞上のICAM-1の発現が増強する. 一方, CXC-ケモカインは好中球の活性化や炎症局所への遊走を促進する.また,好中球エラスターゼはアンチトロンビンIII,ヘパリンコファクターII,トロンボモデュリンなどの抗凝固因子を不活化し,凝固亢進を引き起こす.このような凝固障害の進行に伴い,微小循環障害が増強し,活性化好中球と血管内皮細胞の相互作用が更に修飾される.従って,虚血再灌流障害の治療は,接着分子に対する抗体だけでなく,好中球エラスターゼ阻害剤,アンチトロンビンIIIなどの抗凝固剤,などとの併用投与が必要と考えられる.

キーワード
虚血再灌流障害, 接着分子, インサイド/アウトシグナル伝達, 好中球エラスターゼ

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