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日外会誌. 99(6): 357-361, 1998


特集

大腸癌発生予防の基礎と臨床

5.大腸二次癌の発生過程と頻度

都立駒込病院 外科

森 武生

I.内容要旨
大腸多発癌の臨床病理学的な背景を検討し,その高危険因子を解明して安全なfollow upの方法を考えた.当科で20年間に手術を行った初発大腸癌2,087例中に3.2%68例に第2癌以上の多発癌を生じた.多発癌発生の高危険因子は,第2度近親者以内の大腸癌罹患の家族集積性,第1癌手術時の腺腫の併存がp< 0.0001で,他臓器重複癌の有無がp< 0.003であった.この傾向は多発癌の回数が増加するのに従って強くなった.その他の臨床病理学的諸因子には多発例と多発のなかった症例との間に有意差はなかった.初発癌から第2癌発生までの期間の中央値はm癌で867日,sm癌で1,468日,進行癌で2,024日であった.多発癌例の初発癌の組織学的所見から,腺腫成分の併存の有無でこれを2種に分類すると,腺腫成分のない群では,有意に予後が不良であり,かつ第2癌以降の組織型で分化度の低いものやIlaやIlc型が多かった.このため,術後のfollowに関してはこの群のことを留意することが重要である.多発癌高危険群は第1癌の手術の際の家族歴や,切除標本の詳細な検討により同定され,以後のfollowは第1癌手術後1年以内に大腸内視鏡を行い,その所見により以後の内視鏡検査の間隔を決定していけばよい.

キーワード
多発癌, 第2度近親者, 併存腺腫, DC 型, AN 型


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