[書誌情報] [全文PDF] (476KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 99(1): 21-25, 1998


特集

広範囲熱傷治療の現況

5.広範囲熱傷と代謝・栄養管理

New Jersey医科大学 外科

三島 史朗 , Edwin A. Deitch

I.内容要旨
熱傷患者に対する栄養管理は,代謝亢進状態を抑え,免疫系の正常化をはかるために重要な意味を持つ.異化亢進が特徴的な熱傷後の代謝には,創部や腸管からのMicrobial translocationが関与しており,これを防止することが,熱傷の栄養管理の目的のひとつである.
熱傷患者の栄養状態を評価し,病態に応じて基礎代謝量を参考に,投与熱量を決定し,過剰投与にならぬよう管理する.代謝を抑制し,感染性合併症のリスクを減らす為に,受傷直後から経腸栄養を開始するのが,安全かつ有効である.実際には,少量・間欠的に経腸投与を行い,不足分を経静脈的に補うようにする.
ただし末梢循環不全がある時には,ショックの治療を優先させる.経腸栄養のみで必要熱量がまかなえぬ時にも,腸管バリア機能傷害を防止することは可能なので,少量でも経腸投与を試みることが必要である.
投与基質は,嫌気的代謝が可能な糖質を中心に行うが,過剰投与は耐糖能傷害を招くので,これは避けねばならない.高蛋白投与が有益で,特にグルタミンや分岐鎖アミノ酸の利用が注目されている.アルギニン代謝も,一酸化窒素の産生に関連して,熱傷や敗血症時の病態や,患者の免疫能に関与している.
脂質は熱傷の栄養基質として利用可能であるが,高脂血症を避けるため,経腸的に投与した方がよい.中鎖脂肪酸やω- 3系不飽和脂肪酸等の利用と共に,腸粘膜上皮のエネルギー基質として,短鎖脂肪酸やケトン体の利用が注目される.

キーワード
熱傷, Hypermetabolism, 経腸栄養, Bacterial Translocation

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。