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日外会誌. 97(3): 191-196, 1996


特集

虚血性心疾患における治療の選択

本邦におけるPTCAとCABGの適応選択

順天堂大学 医学部循環器内科

山口 洋 , 横井 尚 , 代田 浩之

I.内容要旨
本邦の内科治療遠隔成績は欧米に比べ極めて良好であること,CABGは重症例,複雑病変,多枝病変に対して安全且つ虚血解除が充分であり,5~10年以上にわたって患者のQOLの回復と維持が可能であること,PTCAは技術的には簡単で患者の受ける侵襲も少いが,高い再狭窄率と虚血解除が不完全であると云う大きな短所をもっている.
上記のことを考慮して,我々の施設では,1)1枝病変はPTCAを第1選択,しかし,左主幹部(LMT)に極めて接近した左前下行枝(LAD)の重症病変か複雑病変は可及的CABG.2)LADを含む重症多枝病変はCABGを第1選択,特に心筋障害の進んだ多枝病変例とLMT病変例は殆んど例外なくCABG.3)LADを含まない2枝病変は,PTCAを第1選択としたが,この症例群の適応選択は流動的である.4)特殊なPTCA適応症例として,CABGが不可能な他臓器重症疾患例(悪性腫瘍,慢性重症肺疾患,重症肝障害など),高齢者(原則として男性80歳以上,女性75歳以上)の重症狭窄病変例,CABGの既往があり新たに冠不全を来した症例.
以上の適応選択基準で1984年~1994年までの11年間にCABGを1,484例,PTCAを1,050例行った結果は院内死亡率PTCA 0.7%,CABG 1.5%,非致死性合併症PTCA 1.7%(緊急CABG 7例を含む),CABG 6%(術周期心筋梗塞 3.4%,脳血管障害 2.6%)であった.また,5年,10年生存率は双方共に良好だが,無心事故生存率となるとPTCAは1枝 60%,55%,2枝 56%,40%,3枝 26%,26%と多枝で極めて悪く,これに対してCABGは1枝 99%,67%,2枝 93%,77%,3枝 93%,75%と多枝でPTCAを遙かに上廻って良好である.この成績から判断して,我々の適応選択基準は妥当であったと判断出来る.特に内胸動脈(ITA)や胃大網動脈(GEA)など動脈グラフトの良好な長期開存率を考えるとLADを含む多枝病変はCABGを優先すべきである.

キーワード
PTCA, CABG, 再狭窄, 適応選択基準


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