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日外会誌. 96(11): 741-752, 1995


原著

抗ケラチンモノクローナル抗体による食道癌の免疫組織学的研究

大阪市立大学 医学部第2外科

谷村 愼哉

(1994年3月31日受付)

I.内容要旨
食道癌における癌組織内ケラチンの分子量の解析については,既に免疫生化学的分析によって低分子量ケラチン・サブユニットの出現およびこれらの腫瘍の進行に伴なう増加が指摘されているが,免疫組織学的検索によってこの低分子量ケラチン・サブユニットの具体的な分子量を解析した報告は少ない.今回著者は,反応するケラチン・サブユニット(ケラチン分子量)のスペクトラムの異なる4種類のモノクローナル抗体を用いて酵素抗体間接法で免疫組織染色を行い,その染色度の差から癌組織内に増加するケラチン分子量を解析し,これと臨床病理学的諸因子および遠隔成績との関連を検討した.
4種類の抗体の染色陽性率と臨床像,遠隔成績の間には関連はみられず,病理学的諸因子との関連は各々の抗体で異なる結果を示した.各抗体の染色度の差から癌組織内に増加するケラチン分子量を解析したところ,A群:48,56kdケラチンの増加する群,B群:40,52kdケラチンの増加する群,C群:56kdケラチンの増加する群,D群:増加するケラチン分子量の特定できない群の4群に分類することが出来た.このうち48,56kdケラチンの増加するA群は他の群に比して病理学的悪性度の高いものが多く,予後も有意に不良であった.多変量解析を用いた予後因子の解析では,48,56kdケラチンの癌組織内増加の有無がリンパ管侵襲についで重要な予後決定因子であった.以上により,免疫組織染色による食道癌組織内ケラチンの分子量の解析は予後の推測に有用である可能性が示唆された.

キーワード
食道癌, 免疫組織染色, モノクローナル抗体, ケラチン分子量, 予後決定因子

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