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日外会誌. 96(10): 695-702, 1995


原著

胆汁体外誘導のビタミン B12代謝に及ぼす影響

1) 富山医科薬科大学 医学部第1外科
2) 小坂旭町医院 

湊 浩志1) , 稲田 章夫1) , 小坂 進2)

(1994年3月24日受付)

I.内容要旨
胆汁体外誘導がビタミンB12 (VB12)代謝に及ぼす影響について臨床例および実験動物にて検討した.
臨床例では閉塞性黄疸を呈して入院した胆襄癌などの19症例を対象とし,それらに減黄処置としてPTCDを造設,経時的に血液生化学検査および血清・尿・排出胆汁中のVB12を測定した.血清VB12値はすべての症例において10ng/ml以上と高度に上昇していた.誘導後血清VB12は総ビリルビンと正相関を示して減少し,360pg/mlと著しく低値を示す症例もみられた.排出胆汁中のVB12濃度は10ng/ml以上を示し,最高値は80ng/mlにまで達した.体外排出VB12総量は2μg/day以上最高12μg/dayに達し,全例正常量(約1~2μg/day)以上のVB12体外排出が認められた.誘導後排出VB12量は減少傾向を示すものの,誘導後30日目以降においてもなお2~8μg/dayのVB12の体外廃棄が継続しており,長期施行例ではmean corpuscular volumeの増加や好中球の核過分節などがみられ大球性貧血への移行が考えられた.
雑種成犬7頭に完全胆嚢外瘻を作成し,採血および肝組織採取を行いそれらのVB12やcobalamin誘導体分画の測定を行った.血消VB12値は520±110pg/mlから4週目以降より低下を示し,8週目には360±40pg/ml(約31%減)にまで低下した.肝組織内VB12量は前値227±115ng/gから4週目では184±123ng/gに,8週目では164±108ng/gとなりそれぞれ19%,30%の減少が認められた.なお,肝組織内cobalamin誘導体分画の割合は8週目でdimethyl benzimidazolyl cobamide coenzymeの低下と,methylcobalaminの増加がみられた.
胆汁体外誘導が長期間にわたるときには大球性貧血への移行を予防するために,VB12(補酵素型)の10μg/day以上の投与が必要であると考えられた.

キーワード
胆汁外瘻, 閉塞性黄疸, ビタミンB12, 腸肝循環, コバラミン誘導体

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