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日外会誌. 96(5): 301-308, 1995


原著

先天性肝アスコルビン酸生合成酵素欠損ラットに対する肝細胞移植

旭川医科大学 第2外科

小野寺 一彦 , 葛西 眞一 , 水戸 廸郎

(1993年12月20日受付)

I.内容要旨
先天性肝酵素欠損症に対する肝細胞移植に適した移植部位を実験的に検討することを目的とした.
肝細胞にL-gulonolactone oxidaseが欠損しているため,肝でアスコルビン酸(AsA) を合成できず,AsAを投与しなければ骨病変と出血傾向をきたして死亡するODS-od/odラットに対し,ODS-od/odラットと,congenicな遺伝的関係にあり,かつ正常な肝細胞を持つODS-+/+ラットの分離肝細胞を,腹腔内,脾内,または門脈内へそれぞれ1×107個,1×107個,2.5×106個移植した.
なお移植した肝細胞を短期間に急速に増殖させるために,レシピエントには移植前4日間肝再生抑制物質である2-acetylaminofluoreneを0.05%含有する飼料を投与し,移植直前に70%肝切除を施行する実験系を用いた.AsAの投与は移植後6週目から中止し,AsA投与中止後6週目の症状発生率と血清AsA値を測定し,肝細胞移植の治療効果を評価した.
非移植群および,腹腔内,脾内,門脈内への移植群における著効率はそれぞれ0%,0 %,60%,100%で,血清AsA値は0.20±0.20μg/ml,0.14±0.05μg/ml,1.06±0.26μg/ml,1.58±0.61μg/mlであった.この様に腹腔内移植は無効であったが,脾内あるいは門脈内への肝細胞移植はこの致死的なODS-od/odラットを無症状で生存させうることが証明された.また脾内移植群に対し脾摘を施行した結果から,本実験系においては脾内移植であっても経脾静脈性に肝内へ着床した肝細胞が主たる役割を果たしていることが確認された.

キーワード
ODSラット, 肝細胞移植, 先天性肝酵素欠損症, アスコルビン酸, 壊血病


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