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日外会誌. 96(5): 295-300, 1995


原著

経腸栄養が肝再生および小腸上皮におよぼす影響
-肝切ラットを対象としてのTPNとの比較検討-

東京医科歯科大学 第1外科

青井 東呉

(1993年12月1日受付)

I.内容要旨
生後7週齢のSD系雄性ラットにHiggins-Andersonの方法で肝の約70%を切除した実験系を用い,enternal nutrition (EN) とtotal parenteral nutrition (TPN)による3日間の栄養管理を行い,肝再生と小腸粘膜に与える効果の違いを各種栄養指標の評価も交えて行った.
実験1として,両群とも10例ずつ行い3日目に全採血後,剖検した.肝再生率はTPN 95.0±4.4%(mean±SD),EN 99.3±4.0%,肝タンパク量はTPN 166.8±4.1mg/g,EN 175.9±4.4mg/gで,窒素出納は1日目でTPN 85±35mg/kg/day,EN 4±66mg/kg/day,3日目でTPN 763±68mg/kg/day,EN 1,164±73mg/kg/dayであった.小腸粘膜の両群間の比較の方法として,周径あたりの小腸粘膜の長さを計測したが,TPNが上部2.56±0.81,中部2.48±0.21,下部2.71±0.90,ENは上部4.31±0.71,中部4.40±0.31,下部4.60±0.84であった.実験2として肝細胞のBrdU模識率を比較したが,1日目はTPN 22.6%,EN 33.8%,3日目では,TPN 17.4%,EN 6.1%であった.以上から,ENの方が肝再生,栄養効果に対し優れ,また小腸粘膜の単位周径あたりの長さも良好で,肝の免疫組織学的検索上も,TPNより早く標識率が低値を示す傾向がある事から,肝再生がより早く達成されると考えられた.そして肝70%切除という高度侵襲消化器手術実験モデルにおいては,術後栄養管理法として,ENが優れている事が証明された.

キーワード
肝再生, enteral nutrition, 肝 BrdU 標識率, 小腸上皮組織計測, 術後栄養管理

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