[
書誌情報]
[
全文PDF] (643KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 96(3): 174-179, 1995
原著
乳癌肝転移に対する肝切除術の治療成績
I.内容要旨肝転移を認めた再発乳癌患者8例に対して肝切除術を行い,乳癌肝転移に対する肝切除術の臨床的意義について検討した.
対象は47~59歳女性で,肝転移は単発性が4例,孤立性3個以内が3例,片葉での多発性が1例であった.このうち,2例は原発性乳癌と同時に発見され,他の2例は肝と同時に骨等への多発転移例であった.肝右葉切除2例,左葉切除1例,拡大肝左葉切除1例,部分切除4例を行い,全例で臨床的肝転移巣は切除できた.手術時間は3時間~ 5時間50分(平均4時間10分),出血量は450ml~1,660ml(平均742ml) であった.術後合併症はなく,平均22日で退院した.
術後,肝への再々発を4例に,肝以外の新たな臓器再発を3例に認めた.肝再々発は,単発性が1例,多発性が3例で,肝切除後4カ月から1年8カ月(平均11.5カ月)で認めた.他の4例は術後3カ月から最長5年5カ月のあいだ肝への再再発を認めず,全例平均で18カ月にわたって臨床的肝転移のない状態を維持した.3例が術後1年4カ月から3年(平均2年2カ月)で再発のため死亡した.5例は術後3カ月から5年5カ月で生存中で,このうち3例は無再発生存中である.肝左葉に10個以上の多発性転移を認め肝左葉切除を行った1例が術後5年5カ月現在無再発生存中である.50%生存期間は,肝切除後36カ月,初回肝再発発見後40カ月であった.
乳癌肝転移は一般に切除術の適応はないとされてきたが,以上の結果から切除可能な症例では積極的な肝切除術は延命に寄与するものと判断された.
キーワード
乳癌, 肝転移, 肝切除術
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。