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日外会誌. 96(1): 10-18, 1995
原著
胃癌にみられる筋線維芽細胞の増殖とその意義
I.内容要旨筋線維芽細胞は創傷治癒期の肉芽組織などに出現する細胞成分の一つとして注目されてきたが,悪性腫瘍の間質にも存在する.胃癌間質の筋線維芽細胞の増殖及びその細胞外基質の産生動態と胃癌の増殖,浸潤,転移との関連性を検討する目的に,胃癌28例(分化癌15例,低分化癌13例)を対象として,免疫組織化学的にVimentin(Vm),α-Smooth Muscle Actin(αSM-1),I・III型コラーゲンの局在を光学顕微鏡,電子顕微鏡的に観察した.
その結果,光学顕微鏡下にVmとαSM-1の酵素抗体二重染色により同定した筋線維芽細胞は,組織型では分化癌よりも低分化癌の間質に多数出現しており,同一癌腫内では癌間質中心部よりも強い浸潤性を示す癌腫の辺縁部に著明な増殖を認めた.I・III型コラーゲンは分化癌よりも低分化癌の間質により豊富な局在を認め,特にIII型コラーゲンは辺縁部に豊富であり,筋線維芽細胞の増殖と類似していた.
電顕的観察では,筋線維芽細胞は線維芽細胞の特徴とされる発達した粗面小胞体とゴルジ装置を有する一方,平滑筋細胞に特徴的なαSM-1に反応するアクチンフィラメントが観察された.I・III型コラーゲンは豊富な細胞外基質として局在を示すとともに,線維芽細胞(筋線維芽細胞を含めた)の粗面小胞体及び細胞膜縁と一部の癌細胞の細胞膜縁にも局在を示した.
以上,胃癌間質における筋線維芽細胞の増殖は,癌の浸潤増殖様式と密接に関連しており,この様な間質細胞の形態変化及び細胞外基質の産生動態は癌細胞などの上皮細胞からの関与も考えられ,胃癌の生物学的悪性度を判定する指標となりうる事が示唆された.
キーワード
胃癌, 筋線維芽細胞, 細胞外基質, α-smooth muscle actin, 酵素抗体二重染色
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