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日外会誌. 95(11): 797-806, 1994


原著

進行大腸癌の予後予測因子の検討とくに PCNA と AgNORsについて

1) 上尾中央総合病院 外科
2) 北里大学 医学部病理
3) 北里大学 医学部外科

西 八嗣1) , 高野 康雄2) , 柿田 章3)

(1993年5月10日受付)

I.内容要旨
進行大腸癌の予後を予測する指標を検索する目的で,長期追跡が可能であった進行大腸癌47例を対象に,生物学的悪性度と相関すると言われる増殖細胞核抗原(PCNA),核小体形成部位(AgNORs)について,病理組織学的悪性度と対比しつつ検討した.PCNAでは陽性細胞の総細胞数における百分率をラベリングインデックス(LI)とし, AgNORsでは1核あたりの平均個数をAgNORs数とした.PCNA LIは大腸正常粘膜群では20.96±8.87であり,大腸癌では54.78±11.35であった.5年以上生存群は57.27±9.56,5年以内死亡群では48.27±13.37と予後の悪い群が低値を示し,それら全てに統計学的有意差を認めた.またPCNA LIと病理組織学的諸因子との関連性を検討すると,組織亜型別およびリンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲それぞれの有無との問には有意差は認められなかったが,深達度との間において,深達度が増すほどPCNA LIは低値を示した.また組織学的進行程度(以下stage)別での検討ではstageが進むほどPCNA LIは低値を示した.
AgNORs数では正常粘膜群1.31±0.10,癌群2.43±0.39であり,統計学的有意差を認めた.5年以上生存群では2.45±0.41,5年以内死亡群では2.39±0.34であり,予後との相関が認められなかった.AgNORs数と病理組織学的諸因子との関連性を検討すると,組織亜型別および深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲それぞれの有無との間には有意差は認められなかった.
結果はAgNORs数は大腸腫瘍において良性病変と悪性病変の判断指標として有用である可能性があるが,予後予測の指標とはなり得ずPCNA LIは良悪性の判断指標として有用である可能性があるのみならず,進行大腸癌に関して予後予測の指標となり得ると考えられた.

キーワード
PCNA, AgNORs, 大腸癌, 予後

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