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書誌情報]
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日外会誌. 95(10): 753-762, 1994
原著
1 型および 2 型血液型関連抗原の大腸正常粘膜および癌における発現と予後要因としての有用性
I.内容要旨大腸癌および正常粘膜におけるLewis血液型関連抗原の発現を免疫組織学的に調べ,予後および肝転移との関連を検討した.対象症例は大腸癌387例,正常粘膜307例であり,また今回検討した抗原は,1型糖鎖抗原としてLe
a, Le
b, Ca19-9, 2型糖鎖抗原としてLe
x, Le
y, S-Le
xである.大腸の各部位別におけるこれらの抗原の発現を見ると,Le
a, CA19-9, Le
xおよびS-Le
xは大腸の部位に関係なく発現し,特に癌部でCA19-9とS-Le
xは各々57.1%, 87.0%と高い発現率を示した.またCA19-9の発現は同部におけるLe
aの発現と関連し,Le
a (-) 例での発現は21.0%と低値であるのに対し, Le
a (+) 例では77.4%と高値を示した. Le
bおよびLe
yは,正常粘膜で右半結腸に比べ左半結腸および直腸で発現が減少するが,癌部では部位による発現率の差がなく,それぞれ高値を示した.以上よりCA19-9, S-Le
xは全大腸において, Le
aおよびLe
yは左半結腸および直腸において腫瘍マーカーとしての意義を有していると考えられた.腫瘍マーカーとして考えられる抗原の発現と予後との関連を, stage II治癒切除症例121例(他病死を除く)により検討すると, Le
a (+) 例でのCA19-9の陽性群 (Grade II~III) は陰性群 (Grade 0~I) に比べ有意 (p<0.001) に予後不良で, 5年生存率では陽性例61%に対し陰性例93%であった. S-Le
x, Le
b, Le
yでは有意差を認めなかった.さらに肝再発との関連では, CA19-9 (Le
a (+) 例) は肝再発症例の原発巣で18/19 (94. 7%) 陽性に対し,非肝転移症例では98/188 (52.1%) と有意差 (p<0.005) を認めた. Le
b, Le
y, S-Le
xではいずれも有意差を認めなかった.以上より, CA19-9は大腸癌における予後および血行性転移に関して有効な腫瘍マーカーと考えられた.
キーワード
大腸癌, 血液型関連糖鎖抗原, CA19-9, 予後要因, 肝転移
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