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日外会誌. 95(10): 743-752, 1994


原著

胃癌におけるオルニチン脱炭酸酵素活性と増殖細胞核抗原の意義

福島県立医科大学 医学部第1外科

星野 豊 , 寺西 寧 , 寺島 信也 , 伊東 藤男 , 今野 明 , 井上 仁 , 元木 良一

(1993年6月23日受付)

I.内容要旨
オルニチン脱炭酸酵素 (Ornithine decarboxylase, 以下ODC) 活性と増殖細胞核抗原 (proliferating cell nuclear antigen, 以下PCNA) の胃癌における意義を明らかにするために,胃癌手術50例につき両者をそれぞれ測定し,臨床病理学的因子との関連を検討した. ODC活性はFurihataら1)の方法にて測定した.PCNAは抗PCNAモノクローナル抗体 (PC10) を用いSAE法にて免疫染色し,細胞1,000個に占めるPCNA陽性細胞の比率をPCNA-Label ingindex (以下PCNA-LI) とした.
胃癌症例のODC活性は,術前内視鏡下に生検鉗子にて採取した胃癌の腫瘍部分で,同様に採取した,腫瘍より充分に離れた非腫瘍部粘膜に比し有意に高値を示した.臨床病理学的因子と腫瘍部分のODC活性との関連では,ODC活性は肉眼型4型,最大径10cm以上,深達度se,浸潤増殖様式 (INF)γ,リンパ管侵襲陽性例,リンパ節転移陽性例において有意に高値を示した.
胃癌症例のPCNA-LIは,新鮮摘出標本の冑癌の腫瘍部分で,腫瘍より充分に離れた非腫瘍部粘膜に比し有意に高値を示した.臨床病理学的因子と腫瘍部分のPCNA-LIとの関連では,PCNA-LIは肉眼型2型,組織型tub2及びpor,深達度ssβ及びse,INFβ,リンパ管侵襲陽性例,静脈侵襲陽性例,リンパ節転移陽性例で有意に高値を示した.
ODC活性とPCNA-LIは,非腫瘍部粘膜で相関係数0.730と強い正の相関を示したが,腫瘍部分では相関係数0.417と比較的弱い正の相関を示し,胃癌における両者の意義の違いが示唆された.
胃癌の腫瘍部分において, ODC活性とPCNA-LIはともにリンパ管侵襲及びリンパ節転移の程度の高度化とともに有意に上昇し,リンパ節転移の指標として有用であると思われた.さらにPCNA-LIは静脈侵襲の程度の高度化とともに有意に上昇し,血行性転移の指標としても有用であると思われた.

キーワード
胃癌, オルニチン脱炭酸酵素活性, 増殖細胞核抗原, 細胞増殖活性


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