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日外会誌. 95(8): 528-532, 1994
原著
胸骨旁転移陽性乳癌に対する胸骨旁,鎖骨上リンパ節郭清の有用性
-拡大手術による生存率向上の可能性-
I.内容要旨進行乳癌の生存率向上を目的としてリンパ節に対するtargeting chemotherapyを併用した拡大手術(定型乳房切除+胸骨旁(Ps)および鎖骨上(Sc)郭清)を行い,胸骨旁単独郭清例(定型乳房切除+PsあるいはPatey+Ps)と生存率,健存率を比較し拡大手術の有用性について検討した.Targeting chemotherapyの方法は活性炭吸着アクラルビシンを術前に癌周囲の乳腺内に注入した.拡大手術の方法は定型乳房切除,Ps郭清の後,胸骨柄および鎖骨,第一肋骨間を線鋸で切離する泉雄法に準じて行った.対象症例は1987~1991年に拡大手術を行った36例の内,Ps転移(+)の17例(A群)と1983~1991年にPs単独郭清を行った134例のうち,Ps(+)例23例(B群)である.1)全症例の生存率,健存率.A群の4年生存率,健存率は79%,53%であり,B群のそれはそれぞれ46%,20%であった.生存率では差はなかったが,健存率では有意差を認めた.2)Ps転移個数別の検討.i)Ps転移=1の場合.A群の4年生存率,健存率は80%,80%で,B群のそれはそれぞれ76%,65%で両群間に差は認められなかった.ii)Ps転移≧2の場合.A群の4年生存率,健存率は80%,38%で,B群のそれはそれぞれ21%,0%であり,いずれもA群が良好で有意差を認めた.3)腋窩リンパ節転移(Ax)個数別の検討.i)Ax転移≦3の場合.A群の4年生存率,健存率はそれぞれ100%,100%でB群のそれはそれぞれ75%,45%であり,いずれも有意差はなかった.ii)Ax転移≧4の場合.A群の4年生存率,健存率は75%,42%で,B群のそれはそれぞれ22%,12%でいずれもA群が良好で有意差を認めた.したがって,拡大手術はPsの術中迅速診断を行い,Ps転移が2個以上認められる場合に行うべきであろう.この論文の結果はrandomized trialではないが,拡大手術による生存率向上の可能性が示唆されていると思われる.
キーワード
targeting chemotherapy, 胸骨旁リンパ節転移, 乳癌の拡大手術
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