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日外会誌. 95(6): 400-410, 1994


原著

室温下灌流法による腎の保存,及び Conditioning と機能判定に関する実験的研究

札幌北楡病院 人工臓器・移植研究所外科

目黒 順一

(1992年12月21日受付)

I.内容要旨
室温 (24℃) 下灌流法による腎の保存の可能性と障害腎や冷却保存腎の機能判定とconditioningについて,実験的に検討した.
ウサギ(日本白色種)の摘出腎を用いて,経腎動脈的に, 12時間まで灌流した.酸素化には,純酸素と膜型人工肺を用いた.灌流液 (pH7.40, Na 140~145mEq/L, K 4mEq/L, Cl 93mEq/L, 浸透圧320mOsm/L) に各種添加物と共に3%のfluorocarbon乳剤 (FC-43) を加えた.
実験群は,温阻血0分,濯流圧50mmHg(I群),温阻血0分,灌流圧80mmHg (II群,以下の群は全て80mmHg),温阻血30分 (III群),温阻血35分 (IV群),温阻血40分 (V群), 4℃UW液内24時間浸漬 (VI群) とした.
その結果,灌流圧50mmHgでは,圧の上昇を招き,灌流の継続は困難であった. 80mmHgでは,利尿,灌流圧共に,安定していた.II, III群では,利尿や尿組成は良好であった.組織学的には12時間後も良好に保存されていた.IV群は,8例中5例が,前群と同様であった.しかし,V群では,5例中2例が脱落し,3例の尿組成は有意に不良であった.組織学的には,酵素組織化学染色で,染色性が明らかに劣っていた.VI群は,II群に比して有意に尿量が多かった.また,尿pHや尿中Na値は有意に高値であり,尿中k値は有意に低値であった.しかし,酵素組織化学染色では, IV群と同等の染色性が保たれていた.
一方,温阻血群では, 4~6時間後に各種の数値が最良となり,本法によるconditioningの可能性が示唆された.
以上より,本法によれば,室温下12時間以上の腎の保存が可能であった.また,障害腎や,冷却保存腎のviabilityを,簡便な検査法で連続的にモニターしながら保存する事が可能であることが判明した.さらに本法による腎のconditioningの可能性が示唆された.

キーワード
室温灌流, fluorocarbon, 腎灌流保存, 機能判定, conditioning

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