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日外会誌. 95(5): 326-335, 1994


原著

イレウスの治療方針の決定における radiopaque marker の有用性

日本医科大学 第1外科

横山 滋彦 , 恩田 昌彦 , 森山 雄吉 , 田中 宣威

(1992年9月21日受付)

I.内容要旨
X線不透過性マーカー (radiopaque marker) を用いてイレウス状態での小腸内容の移動状況を検討することにより,癒着性イレウスに対する治療方針の決定に有用な診断法を考案した.対象は50例の癒着性イレウスで,保存療法開始とともにX線不透過性マーカー20個が入ったカプセルを経口投与し,経時的な腹部X線撮影によりマーカーの腸管内移動状況を解析した.腹部X線写真上に右肋骨横隔膜角と左上前腸骨棘を結ぶ直線により分割される上腹部領域と下腹部領域を設定すると, 24時間後の上腹部領域のマーカー数は7日未満で保存的に解除した早期解除群30例では4.1±4.5個, 7日以上保存療法を要した長期保存療法群20例では16.7±3.8個 (mean±SD) と分布個数に有意差(p<0.01)を認めた.さらに長期保存療法群のマーカーの小腸内分布状況を検討すると吸引減圧効果が不良の場合はマーカーは無秩序に分散したが(分散型),吸引減圧効果が良好の場合はマーカーはlong tubeの先端に集中して分布した(集中型).さらにイレウスが解除されるとマーカーはtubeの先端より肛門側へ進行し一部は大腸へ移行した(大腸移行型),長期保存療法群20例のうち第7病日にマーカーの半数 (10個) 以上が小腸内に残存していた7例は保存的に解除せず手術が施行された.以上より初診時にradiopaque markerを投与して,その移動・分布状況を判定すれば,早期に解除するのか長期間管理が必要なのかの鑑別がガス像だけでは判定がつきにくい治療開始後24時間で可能で,long tube, TPNの明確な適応甚準となり得ること,さらに保存療法施行中の吸引減圧効果と腸管内容の通過状態が経時的に判定できるので,保存療法の限界と手術のタイミングの決定においても有用な補助診断となると考えられた.

キーワード
癒着性イレウス, radiopaque marker, 右肋骨横隔膜角―左上前腸骨棘直線 (CIS line), 保存療法, 手術適応

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