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日外会誌. 95(5): 295-305, 1994


原著

完全静脈栄養における代謝動態特性に関する研究
-特にエネルギー基質組成の相違による影響について-

秋田大学 医学部第2外科(主任:阿保七三郎教授)

島田 友幸

(1992年11月19日受付)

I.内容要旨
完全静脈栄養下における投与エネルギー基質組成の相違による代謝動態特性につき,術前食道癌患者20例,食道癌術後患者17例を対象に検討した.
非侵襲下および侵襲下にて脂肪乳剤併用の有無によりG群(グルコースのみ),G+F群(グルコースと脂肪を併用)に分け,呼気ガス分析を行った.
非侵襲下では,非蛋白性呼吸商は,エネルギー充足率(投与エネルギー量/TPN施行前のREE)と有意な正の相関 (G群: r=0.69, G+F群: r=0.80) を示し,同じ投与エネルギー量では, G+F群がG群よりその値が小さかった.生体には,その状態に見合った最大グルコース酸化量が存在し,それを越えたグルコースが投与された場合は脂肪は酸化されにくいと考えられた.外因性のエネルギー基質が有効に酸化利用されるか否かを決定するのは,全体の総投与エネルギー量とグルコース・脂肪の配合比率の2因子であることが明らかとなった.侵襲下では,二酸化炭素産生量は, G+F群が有意に低く経過した.非蛋白性呼吸商は, G群は,術後徐々に上昇し第3病日以降1を越えたのに対し,G+F群は,0.87から0.91の間を一定に推移した.窒素平衡,骨格筋蛋白分解率は,両群間に有意差を認めなかった.G+F群は,脂肪が有効に酸化利用され,脂肪合成のrecyclingよりもグリコーゲン合成のrecyclingが優位であり,効率の良い代謝動態であると考えられた.また,G+F群は,尿中エピネフリン,17-OHCS, 17-KS排泄量が有意に高くホルモン環境の変化も同様の結果であった.投与工ネルギー基質の相違により,エネルギー代謝動態及びホルモン環境が異なることが明らかとなった.

キーワード
完全静脈栄養, 呼気ガス分析, 脂肪乳剤, 代謝動態, エピネフリン

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