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日外会誌. 95(4): 271-281, 1994


原著

片肺移植後の肺循環動態からみた急性拒絶反応の早期診断

神戸大学 医学部第2外科学教室(指導:岡田昌義教授)

山本 英博 , 山下 長司郎 , 岡田 昌義

(1992年12月9日受付)

I.内容要旨
成犬を用いて片肺移植後,肺動脈にDoppler血流計を装着し術後急性期及び拒絶反応時の移植肺の循環動態を検討し,本法が拒絶反応の早期診断に有用であるかどうかを目的として研究を行った.雑種成犬20頭を以下の3群に分け検討した. I群 (6頭):左自家肺移植モデル群, II群 (6頭):左肺の同種移植を行い免疫抑制剤を投与しなかった群. III群 (8頭):左肺の同種移植後cyclosporine (CYA) 10mg/kg及びAzathiopurine (AZ) 4mg/kgを投与した群である.各群において上行大動脈・左肺動脈にDoppler血流計を装着し術後2週間以上にわたり心拍出量に対する左移植肺動脈血流量の割合(左肺動脈血流比)を測定するとともに,肺動脈圧,左移植肺血管抵抗,血液ガスの測定及び胸部X線撮影を行った.また適時,開胸生検を行い移植肺の組織所見を観察した.左肺動脈血流比はI群では,術後軽度低下したのみであった. II群では1週間目に14.4%まで減少し,移植肺の肺血管抵抗も指数関数的に上昇した. III群では術翌日, 29.1%まで減少したが, 14日目には38.5%まで回復した.その後免疫抑制剤を中止すると,左肺動脈血流比は平均3.7日で12.6%まで低下し,血管抵抗は著しく増大した.この時点における開胸下の肺生検所見では拒絶反応として肺細小動脈周囲に明らかなリンパ球浸潤が認められ.一方, Methyl-prodnisolone 20mg/kgを3日間静注したところ,左肺動脈血流比は平均4.3日で42.1%まで回復し,移植肺の肺動脈血管抵抗も減少するなど拒絶反応の改善が認められた.ところが,この間胸部X線上には異常な変化はみられなかった.以上の結果より,片肺移植においては左肺動脈血流比や肺動脈血管抵抗を測定することによって拒絶反応の早期診断が可能であるという事実が確認された.

キーワード
肺移植, 拒絶反応の早期診断, 肺動脈血流量, 肺血管抵抗, 免疫抑制剤

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