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日外会誌. 95(3): 162-170, 1994


原著

遊離空腸の運動機能に関する実験的検討
-とくに腸管壁血流量と壁内神経叢における Acetylcholine Esterase 活性との関連を中心に-

鹿児島大学 医学部外科学第1講座(主任:島津久明教授)

喜入 厚

(1992年11月4日受付)

I.内容要旨
遊離空腸移植後の腸管運動の病態を解明する目的で,雑種成犬に遊離空腸モデルを作成したのち,腸管壁血流量,壁内神経叢のAch-E活性および消化管運動を術後6週まで観察し,その推移を検討した.実験モデルとしてThiry-Vellaloop作成群と空腸係蹄再吻合群の2群を作成した.さらに前者に関しては,腸管係蹄の脈管柄の外来神経, リンパ管温存群(脈管柄無処置群) とこれらの切離群(脈管柄処置群) の2群を作成した.
Thiry-Vella作成群の腸管壁の血流量を経時的に測定すると,無処置と処置群の間に差異はなく,いずれも1週目, 3週目, 6週目と徐々に増加傾向を示した.脈管柄処置後の壁内神経叢のAch-E活性の経時的変化では, 1週後に最も活性が低下したが徐々に回復し, 6週後には腸管柄無処置群の活性に近似してきた.消化管運動は術後1週までは脈管柄無処置群,処置群のいずれでも伝導方向の不規則な収縮波形が出現した. 2 ~ 3週後では無処置群にmigratingmotor complex (MMC) 様収縮波が出現したのに対して,処置群では頻発する強収縮波が認められた. しかし, 6週目に至るとほぼ正常に近いMMC様収縮波が出現した.以上の結果より,遊離空腸係蹄作成後,比較的早期 (2~ 3週目) には強収縮波を伴う複雑な腸管運動が認められるが,腸管壁血流量の増加に伴って壁内神経叢のAch-E活性と消化管運動が経時的に回復することが示唆された.

キーワード
遊離空腸モデル, 腸管壁血流量, 壁内神経叢のAch-E 活性, 消化管運動

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