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日外会誌. 94(12): 1269-1276, 1993


原著

肝臓の虚血-再灌流障害におけるCa2+-ATPaseと活性酸素の役割

1) 日本医科大学 第1外科
2) 日本医科大学 第2病理

渡辺 仁1)2) , 恩田 昌彦1) , 源河 敦史1)2) , 浅野 伍朗2)

(1992年8月5日受付)

I.内容要旨
血流遮断ー再灌流に続発して発生する細胞壊死などの不可逆性変化の発生機序の解明を目的に,以下の実験を行った. Wistar系雄性ラットを用い, pentobarbital sodiumの腹腔内麻酔下に,門脈右枝および右肝動脈を結紮し,肝虚血ー再灌流モデルを作成した.経時的に採取した肝臓のCa2+-ATPaseの活性局在を, Andoらのクエン酸鉛法を用い,光顕的,電顕的に観察した.そして,O2-を消去するsuperoxide dismutaseと, H2O2を消去するcatalaseを投与するとともにxanthine oxidaseの阻害剤のallopurinolを投与して,その障害抑制効果について画像解析法を併用して検討した.対照群と5分間虚血群では,肝細胞類洞側細胞膜,毛細胆管形質膜,胞体内のミトコンドリア, Kupffer細胞などにCa2+-ATPaseの活性局在が認められた. 10分問虚血群では,肝細胞膜のCa2+-ATPaseの活性局在には低下の傾向が見られた. Ca2+-ATPaseの活性局在は, 5分間虚血の後, 5分間と10分問再灌流を行った動物群では,いずれも中心静脈周囲に不規則性と低下の領向が認められた.そして5分間再灌流群と比較して, 10分間再濯流群でより広範囲に低下が認められた.血中のchemiluminescence値については,対照群が25±5 counts×104 /2×105個/4分であったのに対し, 5分間, 10分間虚血群, 5分間,10分間再濯流群においてそれぞれ軽度の上昇を示した. Superoxide dismutase, catalase, allopurinolの投与群では,それぞれCa2+-A TPaseの活性局在の低下は軽微であった.
以上より,虚血ー再瀧流後の活性酸素は,肝細胞, Kupffer細胞,類洞内皮細胞の障害に際しxanthine oxidaseを介して発生し, Ca2+-ATPaseの活性を抑制し,活性酸素消去系酵素によりこれらの障害は抑制された.

キーワード
肝臓, 再灌流障害, Ca2+-ATPase, 活性酸素, xanthine oxidase

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