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日外会誌. 94(10): 1159-1163, 1993


症例報告

外科治療の奏効した特発性食道痙攣症の 1 例

大阪市立大学 医学部第2外科
*) 大阪市立大学医学部付属病院 病理部

奥田 豊一 , 東野 正幸 , 大杉 治司 , 前川 憲昭 , 谷村 慎哉 , 木下 博明 , 若狭 研一*)

(1992年6月25日受付)

I.内容要旨
本邦では,これまで食道痙攣症(diffuse esophageal spasm: DES)に対し主に保存的療法がなされてきた.われわれは食道機能検査でDESと診断しえた1例に対しesophageal long myotomyを施行し良好な結果を得たので報告する.症例は56歳の女性で,嚥下困難を主訴に来院,食道造影,食道内視鏡検査で分節性の収縮を認めた.食道内圧測定では正常な嬬動運動も観察されアカラシアと鑑別された.さらに,24時間連続食道内圧測定では摂食時に130mmHg以上,25秒以上持続する痙攣性の収縮波を認めDESと診断した.そこで,大動脈弓の高さより胃噴門部にかけesophageal myotomyを施行し,BelseyのMark IV変法による噴門形成術を追加した.食道筋層の組織検査ではアウエルバッハ神経叢の変性がみられた.術後経過は良好で,嚥下困難も消失し摂食時間の短縮と体重増加も認め,食道機能検査でもspasmは消失した.

キーワード
食道痙攣症, 食道筋層切開, diffuse esophageal spasm, esophageal long myotomy

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