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日外会誌. 94(10): 1153-1158, 1993


原著

心臓手術における体外循環離脱困難例および術後重症心不全にたいする補助循環としての VA バイパスの有効性に関する検討

大分医科大学 医学部第2外科
*) 大分医科大学 集中治療部

葉玉 哲生 , 高崎 英巳 , 森 義顕 , 重光 修 , 宮本 伸二 , 野口 隆之*) , 内田 雄三

(1992年6月10日受付)

I.内容要旨
心臓手術後の12例に左心バイパスあるいは両心バイパスによる補助循環を経験した.対象疾患は,急性心筋梗塞5例(心室中隔穿孔閉鎖術2例,冠動脈バイパス術3例),不安定狭心症に対する冠動脈バイパス術1例,弁置換術5例,高齢者ASDに対するASD閉鎖・僧帽弁置換・三尖弁輪形成術中の左室後壁破裂の1例であった.初期の7例は左心バイパスによる補助であるが,全例救命出来なかった.最近の5例では,膜型肺と遠心ポンプを用い,右心房脱血・右腋窓動脈送血によるVAバイパスを採用した.このうち3例は離脱し生存退院可能であった.生存例の補助循環時間は71時間,42時間20分,87時間であった.著者らは,抗凝固療法は積極的に行い,縦隔ドレーンと送血カニューレの周囲よりドレナージされた血液を陰圧リザーバーに溜め輸血ポンプにより50~100ml/minの速度で持続的に返血し,循環維持に務めた.
著者らのVAバイパスにより好結果を得たのは,1) 酸素飽和度の高い血液を冠動脈に近い右腋裔動脈より送血し心筋の酸素代謝を良好に維持出来たこと,2)定常流である遠心ボンプにIABPを併用しcounter-pulsation効果が得られたこと,3)抗凝固療法を積極的に行い,自己血回収回路を用い体循環に返血し出血バランスを維持することにより循環管理が容易となり,更に同種血輸血を減量することが出来た為と考える.

キーワード
補助循環, VA バイパス, 遠心ポンプ, LOS (Low output syndrome)

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